雨に沈んだ石の畳の 鈍の路地を霧は這い往く
街を見下ろす時計の塔に 十と七つの鐘が響けば
眠りの底で 軋みだす歯車の音
夢深く潜む 扉を黒い指先が叩く
目に視えぬ文字で 綴[しる]された
緋色の文字 魔女の刻印[しるし]
さあ宴が始まる
窓辺に凝る残穢のあわい 睡むように死は忍び寄る
闇に漂う幽[かくり]の息吹 死神の手がユメを刈り奪る
眠りの外へ 滲み出す呪詛[のろい]の棘
胸深く潜む 疑怨を黒い指先が写す
拭えない罪を 刻まれた
曇天[そら]を埋める黒い羽音
長い夜が始まる
夢深く響く 呪文を繊い歌声がなぞる
誰知らぬ音色で 紡がれた
街を覆う黒衣の裾
緋色の文字 魔女の刻印[しるし]
今世界を覆い永久に明けぬ夜が始まる